順天堂大学大学院医療看護学研究科・医学研究科環境医学研究所の岩渕和久教授、中山仁志准教授らの研究グループは、結核菌を含む病原性抗酸菌が免疫から逃れて病原菌が寄生する仕組みを解明した。
結核は死者数がもっとも多い感染症のひとつであり、2015年には全世界で960万人が罹患、150万人が死亡している。さらに、発展途上国を中心として多剤耐性結核菌による感染が非常に増加している。そのため、新たな作用機序に基づいた結核治療薬の開発が急がれていた。このような背景から、新薬開発に不可欠な病原性抗酸菌が免疫から逃れて病原菌が寄生する仕組みの解明をめざして、世界各国で研究がすすめられてきた。
同研究グループによると、まず抗酸菌はリポアラビノマンナン(LAM)のマンナンコアとラクトシルセラミド(LacCer)の脂質ラフトの結合を介してヒト好中球に貪食される。そして、好中球に取り込まれた病原性抗酸菌がLacCerの脂質ラフト依存的な細胞内シグナルを遮断するという。
この研究成果は、多剤耐性結核菌をはじめとしたこれまでの治療薬が効果を発揮しない感染症の治療に大いに役立つものであると考えられており、結核対策の新たな切り札になるのではないかと注目されている。研究グループは今後、この研究成果をもとに、貪食・細胞内シグナルを遮断する分子機構をターゲットとした新たな病原性抗酸菌感染症治療薬の開発をめざしている。