電気通信大学の中根大介 助教、学習院大学の西坂崇之 教授らの研究グループは、微生物集団が自発的に渦パターンを形成し、反時計回りに回転しながら巨大化することを発見した。
鳥や魚の集団運動では大規模パターンが生じ、意志があるかのように動き回ることがある。このような集団運動は細菌でもみられ、研究報告は多数あるが、多くは実験室でよく使われる大腸菌などが対象だった。
研究グループは、土壌細菌(フラボバクテリウム・ジョンソニエ)に注目。この細菌を寒天プレートという微生物研究で用いられる固体表面上で培養し、集団が生み出す模様を光学顕微鏡下で30時間、刻一刻と記録した。表面の上では細菌同士の乗り越えが起きないため、一層の細菌がぶつかり・くっつき・はなれながらダイナミックに動く。得られた一連の画像を解析した。
この細菌の表面運動では、細菌同士がくっつくと滑らかに動き、左旋回に偏りがみられた。高密度になると小さく均一な渦模様を形成。しだいに周囲の渦を取り込み、自身の大きさの500倍程度の大きな渦模様(100万個体以上)を形成した。このような大きな渦模様と、一様な反時計回りの回転はこれまでに報告がない。外側の一部の活発な細菌が内側の細菌を駆動しているようにみえた。この渦は飢餓環境で特徴的に生じるため、レーダーのように栄養分を探し出す細菌集団の生存戦略とも考えられるという。
細菌が塊になると左旋回をしやすくなる理由は今のところ不明。この細菌は遺伝学的手法により多種の変異株を作成しやすい。さまざまな実験材料と観察条件による実験を重ねることで解明されることが期待される。