国立大学協会は、財務省が財政制度審議会で明らかにした国立大学経営に対する見解に反論する里見進会長(東北大学総長)の声明を発表した。財務省の認識が国立大学の置かれた財政状況とかけ離れたものだとし、基盤的経費となる運営費交付金の拡充を求めている。
国立大学協会によると、財務省は財政制度審議会の財政制度分科会で独立行政法人化以降の国立大学の財政状況について、運営費交付金の減額は運営費交付金に補助金を加えた国の支援は増加していると主張。付属病院への赤字補填、入学者数の減少などを考えると、運営費交付金の削減が教育研究活動を圧迫しているとの批判に当たらないと訴えた。
これに対し、里見会長は声明で財務省の主張が国立大学の置かれた現実とかけ離れているとしたうえで、教職員の人件費や基礎研究に関係する費用は運営費交付金以外で確保できないと反論。運営費交付金の減額が若手を中心に常勤職員の減少や大学院博士課程への進学減につながっていると指摘した。
さらに、法人化後の収入増は、公的資金による競争的な経費だけでなく、産学連携などで寄付金確保に努めた結果で、消費税率の引き上げや光熱費上昇など経費負担の増加が著しく、各国立大学とも経費削減に苦労していると訴えている。各国立大学は今後も多様な財源確保に努力していくが、教育活動の基盤を支えるのが運営費交付金であり、これを他の財源で代替することは難しいとして、国立大学の現状を正しく理解するよう求めている。