理化学研究所と東京大学は12月23日、さまざまな遺伝子改変マウスを並列的に作製する手法を確立し、「クリプトクロム1(CRY1)」と呼ばれるタンパク質のリン酸化修飾が時間を計ることによって、概日時計が24時間周期を刻むことを発見したと発表した。
地球上の生物の多くは24時間周期のリズムを持って行動している。こうした行動リズムは、概日時計と呼ばれる全身の細胞が持つ時計機能によって生み出される。しかし、周期長がなぜ24時間なのかは不明な点が多く残されている。
今回、共同研究グループはさまざまに機能を変化させたタンパク質を持つ遺伝子改変マウスを効率よく作製する新しい手法「遺伝子導入マウス個体高速作製法」を確立した。この手法により、概日時計機能を失ったマウスに、さまざまに機能を変化させたタンパク質をコードする遺伝子を導入し、概日時計機能を補完することが可能となった。
その結果、概日時計を動かすために重要な働きをするCRY1タンパク質の特定の領域がタイマーのように働き、マウスの周期長を決定していることを発見した。このタイマー領域は、生体内でタンパク質機能の制御によく用いられるリン酸化と呼ばれる化学修飾(リン酸化修飾)を受けていることから、タンパク質内のリン酸化修飾が巧みに時間を数えることで、正確に24時間の周期を刻む可能性が強く示唆されたという。
今後、このタイマー領域のリン酸化を薬物で制御することができれば、概日時計の周期長を効率的にコントロールし、概日リズム睡眠障害等の効果的な治療につながると期待できるという。また、遺伝子導入マウス個体高速作製法を用いると、これまで1年以上かけて全身の細胞を遺伝子改変していたマウスが数カ月で作製できようになる。そのため、この手法により遺伝子改変マウスを用いる多くの研究が加速すると期待できるとしている。