首都圏の私立大学に都心回帰と定員の駆け込み増加の動きが急速に進んでいることが、村岡嗣政山口県知事が政府の有識者会議に提出した資料で分かった。18歳人口の減少や文部科学省が2016年度から実施する入学定員超過に対する私学助成の厳格化に対応した措置とみられ、このままでは首都圏の大学新増設抑制を目指す政府の方針に影響を与えかねない。
資料は山口県が文科省などの情報を基に作成した。それによると、私立大学の都心回帰は2002年に立正大学の経営、経済両学部が埼玉県熊谷市から東京都品川区、2005年に東洋大学の文系学部が埼玉県朝霞市から東京都文京区へ移ったのを手始めに、相次いでいる。
主なところでは、青山学院大学の文系1、2年次課程が2013年に神奈川県相模原市から東京都渋谷区、実践女子大学の文学部などが2014年に東京都日野市から東京都渋谷区へ移転した。
2016年は東京理科大学の経営学部などが埼玉県久喜市から東京都新宿区へ移っている。今後も大妻女子大学の比較文化学部が東京都多摩市から千代田区へ、中央大学の文系学部の一部が東京都八王子市から文京区へ移転する予定。
いずれも広いキャンパス用地を求めて郊外へ進出していたが、都心での大学生活を希望する受験生が多いことから、都心回帰へ踏み切った。都心回帰後に受験生が増加した例もあり、18歳人口が減少する中で受験生確保につながると期待しているようだ。
一方、入学定員の増加を2016年に打ち出した都内の大学は25校に及び、4,643人の定員が増える。文科省の入学定員超過に対する私学助成厳格化に向けた駆け込み定員増とみられ、全国の私立大学定員増加の49.3%を都内が占める。
都内の大学新増設を抑え、地方移転を促したい政府の意向に、都内の私立大学が抵抗している構図が浮かび上がる。