筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター 磯谷順一名誉教授、量子科学技術研究開発機構 小野田忍博士、住友電気工業の角谷均博士らは3月9日、ハーバード大学、ウルム大学、プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校などのグループとの共同研究により、世界最高濃度の室温量子スピンを有するダイヤモンド結晶を作製し、これにより「時間結晶」の室温観測に成功したと発表した。
液体や気体は密度が一様な状態で一つの点から別の点に移動しても変わらないという「連続的並進対称性」というものを持つ。また、原子が規則的に並んでいる結晶では単位肪ごとに移動すると元の状態と区別がつかなくなるという「離散的並進対称性」というものを持つ。たとえば、水が氷になるのは連続的並進対称性を破り、離散的並進対称性へ相変化が生じているということになる。一方、時間も連続的並進対称性を持つと考えられるが、それを破り離散的並進対称性を持つ「時間結晶」の存在が議論されていたが、証明はされていなかった。
今回の研究では、ダイヤモンド結晶の中の強い相互作用と不規則性とを併せ持つ約100万個の量子電子スピン手段を用いて離散的時間結晶生成の観測に成功した。この際生成されたものは、高温電子線照射技術によって作製されたもので、ダイヤモンド中の窒素と空孔により形成されるNVセンターを平均5nmという世界最高濃度で含んでいる。
今後は量子コンピューティングの量子メモリや量子計測の高精度化への応用が期待されるとしている。