世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人である日本ロレアル株式会社は、2021年度第16回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者4名を発表した。
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、日本の重点課題とされている。科学分野においても、日本における女性研究者の割合はOECD諸国最下位の16.9%であり、欧米諸国と比べて半分以下にとどまっている。
ロレアルは美の世界的リーダーとして女性活躍の支援を世界規模で行っており、1998年には世界5大陸から優れた女性科学者を表彰する「ロレアル-ユネスコ女性科学者」(ロレアル本社主催)をユネスコと共同で創設。過去受賞者から、5名ものノーベル賞受賞者を輩出している。
日本では、2005年に「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」(日本ロレアル主催)を、日本ユネスコ国内委員会の協力のもと創設。過去受賞者は、「Forbes 30 Under 30 Asia list –Class of 2020」に選出されるなど、国内外で高い評価を受けている。日本国内で、物質科学または生命科学の2分野における博士後期課程に在籍、または同課程に進学予定の女性科学者を対象としており、各分野からそれぞれ2名(計4名)を毎年選出し、受賞者には、奨学金100万円が贈られる。
2021年度の「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」は、研究対象が広範化、複雑化する現代の科学界を反映し、素粒子物理学から物質科学、数学、そして細胞生物学から植物生理学まで、多岐にわたる研究領域からの応募があった。
「物質科学」分野の受賞者2名は、 大小田結貴さん(26歳)と門脇万里子さん(28歳)。大小田さんは誕生して間もない星と惑星系が同時期に誕生したことを明らかにするなど、太陽系起源の理解に貢献したことが評価された。門脇さんは、炭素鋼の金属組織と耐食性との関係性を解明し、高耐食化に貢献したことが評価された。
「生命科学」分野では、大久保祐里さん(28歳)と永田理奈さん(27歳)。大久保さんは、植物が土壌中から窒素栄養を効率よく吸収するしくみを解明し、より少ない肥料で栽培できる植物の作出に貢献したことが評価された。永田さんは、生体内で正常細胞が不良細胞を除去する仕組みを解明し、がん制御やアンチエイジング医学へ貢献したことが評価された。
4名の受賞者においては、留学、共同研究、海外の学会での発表など、若いころから多くの価値観や考え方に触れることが、「思考の自由」につながり重要であると審査員から評価を受けた。
受賞者※年齢は11月9日現在
〇大小田結貴さん(26歳)東京大学大学院 理学系研究科 山本研究室、フォトンサイエンス・リーディング大学院 (ALPS)、 日本学術振興会特別研究員DC
〇門脇万里子さん(28歳)東北大学大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻 武藤研究室(日本学術振興会特別研究員DC1)、2021年4月~ 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 研究員
〇大久保祐里さん(28歳)名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻 細胞間シグナル研究グループ、日本学術振興会特別研究員DC1
〇永田理奈さん(27歳)京都大学生命科学研究科 高次生命科学専攻 井垣研究室 日本学術振興会特別研究員DC2(当時)2021年4月~同研究室 研究員
なお、日本ロレアルは2022年度の同賞の応募を11月16日より開始している。期限は2022年2月28日(月)必着まで。「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」事務局宛てに必要書類をメールで送付する。
参考:【ロレアルグループ】2021 年度 第 16 回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」未来の科学をけん引する物質・生命科学分野の受賞者4名を発表(PDF)