金沢大学「子どものこころの発達研究センター」の三邉義雄センター長、菊知充教授らと浜松医科大学による共同研究グループは、人の後頭部表面に弱い直流電流を流す技術を用いることで、身体のイメージ操作能力を高められることを世界で初めて示した。
身体のイメージ操作能力とは、身体の動きを脳内で想像する能力のこと。この能力を活性化できれば、リハビリなどで運動学習を促進することが可能になる。
研究で用いられたのは、経頭蓋直流電流刺激という方法。直流電流を10~20分程度通すことで脳神経の活動を変化させるものだ。なお、流す電流は1~2ミリアンペア程度と、本人がほとんど気づかないくらい弱い。リハビリやうつ病などの治療への応用が期待されるこの技術は、近年、活発な研究が世界中で行われている。
しかし、脳のどの部分を活性化すれば、身体のイメージ操作能力を向上させられるかについては、これまで十分な結論が得られていなかった。
そこで研究グループはまず、陽電子放射断層撮影(PET)という測定法により脳の活動量を視覚化。身体の視覚イメージを空間的に処理する脳の部位を調べた結果、後頭部にある外側後頭側頭皮質という部位が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
次に、この外側後頭側頭皮質への電流刺激実験を行ったところ、身体のイメージ操作テストにおいて正答率が6.7%増加。すなわち、後頭部を刺激することにより、身体の動きを脳内で想像する能力が向上することが確認された。
研究グループは、身体のイメージ操作能力の向上が認知機能の改善に作用すると指摘。リハビリが必要な人の早期回復といった応用が期待されるとしている。