東京都市大学環境学部のリジャル・ホム・バハドゥル教授ら研究チームは、オフィスにおける季節ごとの快適温度を明らかにし、快適温度と外気温度の関係から適応モデルを開発した。
建物の省エネを考慮し、環境省は、冬の暖房を20℃、夏の冷房を28℃に設定することを推奨している。しかし、これは実際に働いているオフィス等を対象にしたフィールド研究に基づく検証結果ではない。過ごしやすいと感じる「快適温度」に関するフィールド研究は、日本ではまだ発展段階だ。
人はその環境に対する適応能力により、外気温度に応じて室内快適温度を変化させることができる。海外では、こうした適応能力を生かした適応モデルが、大規模なデータベースに基づいて設定され、建築設計や評価に活用されている。日本においても、高温多湿気候と生活習慣に合った独自の適応モデルが必要だった。
そこで研究グループは、東京と横浜のオフィスビルにおいて、温熱環境の実測と社員の快適感調査を実施。フィールド研究は、1年以上かけ、オフィスビル11棟、約1,350人を対象として行った。
その結果、オフィスの平均快適温度は、冷暖房非使用時で25.0℃、冷房使用時で25.4℃、暖房使用時で24.3℃であり、年間を通して大差ないことがわかった。社員の多くはオフィスの温度に満足していたが、外気温度に応じて快適温度を定めても、人の適応能力により、エネルギー消費量を削減できる可能性がある。
今回のフィールド研究のデータを元に、外気温度からオフィス室内の快適温度を予測する適応モデルが、日本で初めて開発された。研究チームは、適応モデルに基づいた基準を作成すれば、エネルギー消費量の削減や環境負荷低減にも有効だとしている。