九州大学生体防御医学研究所エピゲノム制御学分野のの佐々木裕之主幹教授らの研究グループは遺伝的な異常によって起こる先天性免疫不全症候群(ICF症候群)の原因遺伝子を発見しました。これまで診断が困難だったICF患者も、早期の診断が可能になると期待されています。
ICF症候群は、免疫に関わる細胞の一部が成熟しなくなる病気です。これによって、体内に侵入した病原体を無力化する抗体を作ることができなくなってしまいます。感染に対する抵抗力が低いため重症感染症にかかりやすくなっています。そのため多くの患者が幼少期に亡くなってしまいます。感染症を防ぐためには早期に診断をし、治療により抗体を補充することが有効とされています。
これまでの研究から免疫細胞が成熟できないのは遺伝子の働きを上手くコントロールできていないためだということが分かっていました。ICF患者のおよそ半数は遺伝子のコントロールに必要な酵素を作る遺伝子に異常が見つかっていました。さらに1/4の患者では、機能は分らないものの異常が起こっている遺伝子の特定ができていました。このおよそ3/4の患者に対しては遺伝子検査からICFの早期診断が可能になっています。しかし、残りの1/4の患者については原因の特定ができていませんでした。今回の研究では残りの1/4の患者の遺伝情報を読み取ることで、異常が起きている箇所が無いかを調べました。その結果、これまで原因が特定できていなかったICF患者の多くに共通する遺伝子異常を発見することに成功しました。これによりICF患者の90%以上の早期診断ができるようになったのです。
今回の発見はより多くの患者の命を救うことにつながるでしょう。今後はさらに研究を進め、新しく発見された遺伝子がどのように遺伝子の制御にかかわっているのかを調べていくとしています。まだ原因が特定できていないケースに関しても引き続きの調査を期待したいです。
出典:【九州大学】先天性免疫不全症候群(ICF症候群)の原因遺伝子を発見!-90%以上のICF症候群患者の原因遺伝子特定で早期確定診断が可能に-(PDF)