名古屋大学は、表皮融解性母斑という特殊なあざを持った父親の子が全身に表皮融解性魚鱗癬を発症する確率を予測し、将来のリスクを示すことに成功したと発表した。成果は2017年5月19日、「Journal of Investigative Dermatology」に掲載された。
生来の「あざ」には様々なものがあり、ほとんどが母体にいる間に、体の一部の細胞で遺伝子変異が生じることを原因とする。一般的な遺伝病では、全身の細胞の遺伝子が同じ変異を持つが、あざの遺伝子変異は体の一部に限られ、「モザイク」と呼ばれる。モザイクでは、精子や卵子の遺伝子には変異がないことが多いため、あざは遺伝しないといわれる。しかし、例外的に次世代に遺伝することがあり、その場合は、全身に同様な皮膚症状が発症する。
今回、研究グループは、ケラチン1またはケラチン10の遺伝子変異のモザイクから起こる表皮融解性母斑を研究。対象とした家系では、表皮融解性母斑が体表面積の5%あった父親の子に全身にわたって表皮融解性魚鱗癬が発症していた。
まず、遺伝子診断により子の病気を確定し、父親のあざの部分に同じ遺伝子変異があることを確認。次の子にも遺伝子変異が伝わり、症状が出る可能性を予測するため、遺伝子変異を持つ精子の割合を次世代シークエンシングという技術によって測定した。結果、父親の精子細胞のうち3.9%の細胞が変異を持っていることが分かり、これから同じ確率で次の子にも病気が発症すると予想した。
この研究により、表皮融解性母斑を持つ父母への詳細な遺伝カウンセリングを行うことが可能になり、父母の将来への不安を減らすことができると説明している。
論文情報:【Journal of Investigative Dermatology】A child with epidermolytic ichthyosis from a parent with epidermolytic nevus: risk evaluation of transmission from mosaic to germline