大阪大学産業科学研究所の真嶋哲朗教授らの研究グループは、黒リンを用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射でも、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出した。
今回、研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、層状のチタン酸ランタン(La2Ti2O7)を数層からなる超薄膜として利用。これらと数ナノメートルのサイズの可視光にも吸収をもつ金ナノ粒子との三成分からなる新しい複合体を開発した。
この複合体では、黒リンと金ナノ粒子が「光増感剤」として働く。すなわち、黒リンが可視光・近赤外光を吸収し、金ナノ粒子が可視光を吸収して、高エネルギー状態になった電子(励起電子)が、チタン酸ランタンに移動し、プロトン(水素原子核=陽子)を還元する。これにより、太陽光からの広帯域波長光を利用することが可能になり、水から高効率で水素を生成させることに成功。世界で初めての成果となった。
今回の研究成果は、水素を基本とするエネルギー社会(水素社会)の根幹となる、太陽光による水素製造の実現につながり、同時に環境問題の解決に大きく貢献することが期待される。
論文情報:【Angewandte Chemie International Edition】Au/La2Ti2O7 Nanostructures Sensitized with Black Phosphorus for Plasmon-Enhanced Photocatalytic Hydrogen Production in Visible and Near-Infrared Light