東北大学、北海道大学、宮城大学、および東北大学発ベンチャーであるAZUL Energy株式会社は、産業廃棄物であるホヤ殻と畜産業から出る廃棄血液を有効利用することで、高い活性を持つ両性電極触媒「ナノ血炭」を合成することに成功した。
炭に動物の血液をかけて焼成すると得られる「血炭」は、古くから日本で漂白剤などとして用いられ、炭素が持つ吸着機能と、ヘム鉄などの血液由来のヘテロ元素成分がもたらす触媒作用を併せ持っている。現代でも、ヘテロ元素を導入した炭素材料(ヘテロ元素ドープ炭素)は多様な電気化学反応を触媒できることで知られ、電池の電極触媒としての応用が期待されている。
一方、東北三陸地域特産のホヤは唯一セルロースを産生できる動物であり、ホヤ殻に蓄積されたセルロースナノファイバー(CNF)は、炭化すると品質の良い炭素となることがわかっている。さらに、畜産業から出る廃棄血液を乾燥した乾燥血粉には、ヘム鉄や窒素・リンなどの元素が大量に含まれていることから、本研究では、これらを混合・焼成することで、産業廃棄物を活用してヘテロ元素ドープ炭素を合成できるのではないかと考えた。
実際に、ホヤ殻由来CNFと乾燥血粉を混合して焼成したところ、ナノサイズの炭素構造と鉄・窒素・リンなどの様々なヘテロ元素が複合化した「ナノ血炭」ができた。この「ナノ血炭」は、酸素還元反応・酸素発生反応の両方に高い活性をもつ両性電極触媒であり、白金炭素触媒などのレアメタルを用いた電極触媒に匹敵する性能を持つことが明らかになったという。
本研究成果は、処理に困っていた産業廃棄物を次世代エネルギーデバイスの製造へと活用できる可能性を秘めており、資源循環・エネルギー循環を促しSDGsの推進にも資する技術となることが期待される。