新型コロナウイルスによるパンデミックでは、家にいることや人ごみを避け他者との距離を置くこと(ソーシャルディスタンス)が推奨された結果、幼稚園・保育園の休園や学校の休校が相次ぎ、子どもたちは一定期間、自宅に閉じこもることを余儀なくされた。これまでの研究で、子どもの社会性の発達は社会的隔離によって阻害される可能性が示唆されているが、今回の休園・休校およびソーシャルディスタンスは子どもたちの社会性の発達にどのような影響を与えたのだろうか。
京都大学、東京大学、大阪大学の共同研究グループは、2020年4月から2021年2月までに収集した縦断データを用いて、パンデミック下の日本の0歳から9歳の子どもの社会情緒的行動や他者(親、友達など)との心理的距離の変化を保護者へのアンケートにより調べた。
その結果、子どもの社会情緒的行動(思いやりや自制心を伴う行動)はこの期間を通じてほとんど違いが認められなかった。
一方、他者との心理的距離については、最初に緊急事態宣言が発出され多くの休園・休校がなされた2020年4月から、比較的パンデミックが落ち着き休園・休校が解除された2020年10月にかけて、子どもと保護者の心理的距離が遠くなり、逆に子どもと友達などの他者との心理的距離が近くなっていた。子どもたちは、新型コロナウイルスの脅威から一時的に解放された時期に、園や学校で他者と交流する時間を得て、親との心理的距離が離れ、他者との心理的距離を近づけた可能性がある。
以上の結果は、パンデミックが子どもの社会性の発達にそれほど大きな影響を与えないかもしれず、過剰な心配が必要ないかもしれないことを示唆したが、今後は経済的に深刻な影響を受けていたり虐待があるようなリスクの高い家庭でも同様の結果となるか検討していく必要があるだろう。