大阪大学大学院の研究グループは、発汗時における汗腺収縮の解明につながるヒト汗腺の三次元構造を可視化することに、世界で初めて成功した。熱中症・多汗症の治療や新しい制汗剤の開発への貢献が期待される。
温暖化や超高齢社会を背景に、多汗症や熱中症の患者の増加が社会的問題となっている。障害を起こした発汗機能を改善するためには、発汗時に収縮を起こす汗腺の構造を理解する必要があるが、汗腺は複雑な構造を持つため、従来の解析では解明できなかった。
今回、研究グループは、組織や器官を丸ごと染色して細胞の空間的な分布を調べる「ホールマウント免疫染色法」を用いた。まず、汗腺の複雑なコイル構造を理解するために、汗腺の構成部分ごとに識別できるマーカーを用いて、三次元的に汗腺を可視化した。その結果、コイル構造内の分泌腺は、チューブ自体がタオルを絞るように、ねじれた立体構造をしており、その分泌腺を覆う筋上皮細胞は、分泌腺のチューブのねじれ方向に沿って並んでいることが分かった。
さらに、発汗刺激を行うために必要な神経も三次元的に可視化したところ、神経は分泌腺の筋上皮細胞のみを取り巻いていた。この特徴的な三次元構造は他の分泌腺(乳腺や唾液腺)とは全く異なっており、独自の分泌機構で汗を排出していることが予想された。
今後、汗腺の収縮の基礎的なメカニズムがさらに解明されれば、発汗に関連する病気(熱中症や多汗症)の解明や治療につながることが期待される。さらに、これまでは汗腺にフタをする機能が中心であった制汗剤の領域で、汗腺に直接作用することにより、汗の量を制御することができる新たな機能をもった制汗剤が提案される可能性がある。
論文情報:【PLOS ONE】“Three-dimensional Cell Shapes and Arrangements in Human Sweat Glands as Revealed by Whole-mount Immunostaining