広島大学の仲一仁准教授、瀧原義宏教授らは韓国CHA大学などと共同で慢性骨髄性白血病(CML)の再発の原因となるCML幹細胞の代謝産物を解析することで、栄養源となる物質を発見しました。この栄養補給のメカニズムをおさえることが新しい治療法にもつながるといいます。
CMLの原因は血液を作り出す造血幹細胞ががん化しCML幹細胞となることです。CMLは特効薬であるチロシンキナーゼ阻害薬によってその治療成績が飛躍的に向上しました。しかし治療をやめると再発してしまうため、患者は高価な薬品を服用し続ける必要があり大きな問題となっています。再発の原因として考えられているのはCML幹細胞が残存することです。CML幹細胞はチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を持っているため、治療後にも細胞が残存し再発を引き起こしていると考えられています。再発を防ぐためにCML幹細胞を根治する新しい治療法が求められています。
今回の研究ではCMLを発症した動物からCML幹細胞を取り出し、細胞内で作られる代謝産物を解析しました。その結果、CML幹細胞で非常に高くなっているジペプチドという栄養素があることを発見しました。CML幹細胞がジペプチドを栄養源として生き延びていた可能性が考えられます。さらに、このジペプチドの取り込みを阻害する薬を従来のチロシンキナーゼと併用することで再発を軽減できることを見出しました。
CML幹細胞の栄養補給を阻害する薬剤とチロシンキナーゼ阻害剤を併用する治療法は、CML患者の再発を減らす新しい治療法となることが期待されています。今回発見したCML細胞がジペプチドを取り込むメカニズムは正常な造血幹細胞では機能していないことから、副作用も少なく治療ができる可能性があります。さらに、すでに抗生物質として承認されている治療薬であることも大きなメリットです。