長江下流域に当たる中国浙江省の田螺山古墳で約7,000年前に渡り鳥のガン類が飼育されていた証拠を、北海道大学、筑波大学、東京大学、金沢大学、蘭州大学、浙江省文物考古研究所、蕭山博物館による国際研究グループが複数見つけた。ガン類を家禽化したガチョウは約3,500年前のエジプトに起源があると考えられてきたが、その定説を覆す新発見といえそうだ。
北海道大学などによると、長江下流域はガン類の越冬地だが、繁殖地ではない。ところが、田螺山古墳で出土したガン類の骨232点には、越冬地に渡ってきたと考えにくい幼鳥のもの4点や渡りを経験していない成鳥のものが見つかった。
さらに、窒素と炭素の安定同位体分析で渡りをしていたガン類と異なる食性を持ち、水田で栽培されていた米を食べていたことが推定された。形態学的には、個体の体格が類似していることも明らかになり、数世代にわたって野生種と隔離されていたことを示唆している。研究グループは約7,000年前に長江下流域でガン類が飼育され、家禽化の初期段階にあったと結論づけている。
現在、飼育されているガチョウには、サカツラガンを家禽化したシナガチョウとハイイロガンを飼いならしたヨーロッパガチョウがいるが、田螺山古墳で出土したガン類の種類は特定できていない。
鳥類の家禽化はニワトリが約4,000年前以降、ガチョウが約3,500年前と考えられてきた。しかし、今回の調査は従来の定説を大幅に覆し、世界最古の家禽がガチョウであることを示す結果を出している。