Environment: Assessing the impact of climate change on pollen season length in the US
米国における植物の花粉の放出は、21世紀末になると、気候変動の結果として、今よりも最大40日早く始まるかもしれないというモデル化研究の結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、気候変動と環境汚染が、花粉関連アレルギーの季節を長期化して、ヒトの健康にさらなる悪影響を及ぼす過程を明らかにしている。
風による花粉の生成は、気温や降水量と関係があり、植物の受精に重要な役割を果たしている。花粉症などの花粉誘導性の呼吸器アレルギーは、世界人口の30%が罹患しており、欠勤や医療費支出による経済的損失の一因になっている。こうした健康問題や経済的問題のため、植物の花粉生成量、そして季節性アレルギーが気候変動によってどのように変動するかを解明することは重要だ。
今回、Yingxiao ZhangとAllison Steinerは、気候データと社会経済的シナリオを組み合わせて、21世紀末(2081~2100年)の米国における花粉放出量の変化を予測するためのモデル化法を開発し、過去の期間(1995~2014年)と比較した。その結果、21世紀末には、花粉の放出が最大40日早く始まり、19日長く続く可能性があり、米国全土の年間花粉放出量が16~40%増加することが分かった。さらに、このモデルに二酸化炭素濃度を組み込んだところ、人為起源の環境汚染のために年間花粉放出量が最大250%増加する可能性のあることが判明した。
著者たちは、二酸化炭素濃度が花粉生成量に及ぼす影響についてのデータは、実験室内での研究結果に基づいたものであるため、自然環境における影響を定量化するためにはさらなる研究が必要だと指摘している。また著者たちは、今回の知見は、気候変動が花粉の放出パターンに及ぼす影響とその結果としての健康への影響に関するさらなる研究の出発点だと結論付けている。
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「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「環境:米国における花粉放出期の長さに対する気候変動の影響の評価」