もともと樹木から繊維を取り出す研究をしていた伊福准教授が鳥取に来たことがカニの殻を有効利用する研究のきっかけでした。鳥取にはカニの水揚げが日本一の境港があり、殻が大量に廃棄されている現状がありました。殻を旅館などから提供してもらうなどして繊維を取り出す研究を始め、1カ月ほどで繊維の取り出しに成功しました。これまではキチンといえば粉末が一般的でしたが、これは水にあまりなじまず利用が困難でした。一方繊維状のキチンは水とよくなじんでゼリー状になるため、化粧品や食品への添加など様々な活用が可能です。その後の研究で優れた保湿効果、抗肥満効果、整腸作用などがあることが分かっています。さらにプラスチックに混ぜ込むことで透明性をそのままに強度を上げることもでき、スマートフォンなどのデジタル端末やフィルムといった工業製品にも使えるとしています。
これまで捨てていたカニの殻の有効利用は、これからも新しい産業の創出につながるでしょう。化粧品、食品のみならずプラスチックの材料にもなるという多機能性も今後の用途の広がりを期待させてくれます。