国立極地研究所/総合研究大学院大学の片岡龍峰准教授、国文学研究資料館の岩橋清美特任准教授は、江戸時代の古典籍に残る記録から、1770年に史上最大の磁気嵐が発生していたことを明らかにした。
研究グループは今回、京都・東羽倉家の日記に1770年のオーロラの記録を発見。日記にはオーロラが空の半分を覆ったことや、オーロラの筋が天の川を貫いたと書かれていた。その記述をもとに京都からオーロラがどう見えるかを計算した結果、江戸時代の古典籍『星解(せいかい)』に描かれたオーロラの絵図に描かれたものと同形状が再現された。地磁気の強さを考慮すると、1770年の磁気嵐は、観測史上最大とされる磁気嵐と同等かそれ以上の規模であったと推定された。
記録上過去最大の磁気嵐は1859年9月に発生。英国人観測者にちなみ「キャリントン・イベント」と呼ばれる。日本でも、1204年の京都で1週間のうちに幾晩もオーロラが見えたとの記述が藤原定家の日記『明月記』にある。今回検討された『星解』の記録は1770年9月17日(明和7年7月)のもので、山から放射状に吹き出す形のオーロラの絵は有名だ。このときのオーロラは国内で最多の地域で目撃されている。
オーロラは磁気嵐の発生と関連して生じる。太陽での爆発によりプラズマが太陽磁場とともに大量に放出されて地球に到達し、地球の磁場が一時的に弱くなる磁気嵐が発生する。磁気嵐が大きいとオーロラが極域で活発になり、日本などの低緯度地域でも見ることがある。
江戸時代には天文への関心が高く、詳細な記録や管理のあり方は「市民科学」と呼べるものという。今回の成果は、250年前の研究成果が現在の最新の科学研究と結びついてもたらされたとしている。