熊本大学大学院先端科学研究部 岡島寛准教授は、特定銘柄の騰落に左右されにくい株価指数の設計に関する基礎研究成果を発表した。
日経平均株価や東証株価指数などの株価指数は、経済動向を表す代表的な指標。日本銀行が資金供給オペレーション※などの公開市場操作を行う場合には、株式市場においてETF(上場投資信託)を買い入れることになるが、買入対象となるETFは日経平均株価もしくは東証株価指数に連動するものに限られるなど、株価指数は重要な役割を果たし、株式市場全体の動向を見る上での有効な値として知られている。
しかし、これまで、この株価指数には特定銘柄の値上がりや値下がりが過度に指数に影響を与えることが“少なくない”という問題があった。例えば、225の銘柄から構成される日経平均株価では、ある1つの銘柄は日経平均値に対して6%を超える(2017年9月末現在)寄与度を持っている。このように株価指数が特定銘柄の動向に偏って決定される問題は市場の歪みの原因にもなり得る。そのため、公平な市場形成のためには広く銘柄を評価し、それらの代表値を与えるような新たな株価指数が望まれる。
今回の研究では、値上がりおよび値下がり率に関するメディアン(中央値)に着目した新たな株価指数を提案した。提案した株価指数は、日経平均株価や東証株価指数と一定の相関を持ちつつ、短期的な騰落では特定銘柄の影響を受けにくくなるように設計されている。
今回設計した株価指数を過去の日経平均株価のデータを利用したシミュレーションによって有効性を検証した結果、平均株価とある程度の相関を持った上で、特定銘柄の大幅な変動の影響を受けないことが確認された。現状では、計算機シミュレーションをベースとした基礎研究段階であり、今後は株価指数における係数や重みづけについて検討していく予定だという。
※資金供給オペレーションとは、日本銀行が国際や手形などを金融機関から購入することで、市場に資金を供給すること。
論文情報:【システム制御情報学会論文誌】メディアンに基づいた株価指数の構成