東京都立産業技術研究センターは、東京医科大学、福井大学、慶應義塾大学と共同で、世界初の機能を持つ「ステント1」を開発。従来のステントの長所を併せ持った今までにない性質のもので、ステントを長期間用いた緩和療法が可能となり、ガン患者や医療従事者の大幅な負担軽減につながるという。
すい臓ガンなどで胆管が閉塞すると胆汁が排出されず黄疸が発症する。黄疸には発熱や悪心などが併発するため、胆管にステント(管を内側から広げる筒状の医療機器)を内視鏡的に留置して胆汁を排出する緩和療法を行う。ステント材には主にプラスチックと金属があり、プラスチックステントは抜去可能だが早期に詰まってしまう。金属ステントは内腔が広く長期開存性を示すが、網目から癌が浸潤し抜去できない。このため「長期開存性を示し抜去可能」なステントの開発が待望されていた。
研究グループは、水分を含むと膨張するポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルに着目。PVAは生体に安全で、頑丈なハイドロゲルを作製できる。今回、このPVAハイドロゲルを用いた胆管ドレナージ用自己拡張型ステントを世界に先駆けて開発した。
このステントは、乾燥状態で内視鏡的に胆管に送達され、胆管留置後は胆汁などの体液による膨潤により自己拡張し、内腔が拡大する。膨潤後の内径(約5mm)は市販のプラスチックステントの内径(最大3.3mm)を超えており長期開存性が期待される。実験では、作製した胆管ステント試作品が豚胆管を拡張できることを確認した。
今回開発したステントは、現行ステントの長所を両立した全く新しいもので、今後、ステント留置が必要な患者、医療従事者の大幅な負担軽減が期待できるとしている。