大阪大学産業科学研究所の八木康史教授らの研究グループは、AI(人工知能)技術の中でも特に注目を集めている深層学習を用いた高精度歩容認証技術を開発した。
人の歩き方(歩容特徴)は、服装や髪型の差異では変化せず、防犯カメラ等で遠方から撮影した低解像度の映像からでも抽出可能だ。個人認証には非常に実用的な特徴とされる。しかし、カメラに対して人の歩く向きが異なると、人の見え方が大きく異なるため、従来の技術では歩容認証が困難だった。そこで、手の振り方や脚の振り幅等の抽象的な特徴の差を比較することが有効とされる。
今回、独自の深層学習モデルを提案し、これらの特徴を適切に使い分けることで、歩く向きが異なる人物映像からの高精度な歩容認証を可能にした。その結果、歩く向きが大きく異なる場合、従来技術では本人認証の誤り率が約40%であったのに対し、今回開発の技術では世界最高精度の約4%まで低減できた。これにより、「未来科学捜査」歩容鑑定の適用範囲を大きく広げることになる。
さらに、深層学習に用いる評価基準を適切に変更することで、本人認証のみならず、カメラに映った複数の人物から特定の一人を探すといった個人識別が可能となる。これらの技術により、店舗・商業施設等で同一人物の移動経路の解析に利用することで、顧客に応じたサービス提供等のマーケティング応用をはじめ、犯罪捜査以外の様々な用途への適用が期待される。
日本では2020年に東京オリンピックを控え、テロや犯罪などに対する安全対策の近代化が喫緊の課題であり、今回の技術を用いることで防犯カメラを用いた不審者や容疑者の特定や追跡を迅速に行うことが期待される。