科学研究費助成事業は、日本の自然科学分野の論文発表数や引用された件数が上位10%に入るTop10%補正論文数の過半数を占めるが、その伸び率が近年、小さくなっていることが、科学技術・学術審議会の研究費部会に提出された資料で分かった。
資料は文部科学省科学技術・学術政策研究所がまとめたもので、科学研究費助成事業データベースなどから、科研費が関与する論文数や研究者数などを調べた。Top10%補正論文数とは、被引用回数が各年各分野で上位10%に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/10となるように補正を加えた論文数を指す。
それによると、科研費が関係した論文は2011~2013年の3年平均で論文総数の52.0%、Top10%補正論文数の60.4%を占めた。しかし、科研費が関係した論文数の伸び率が1996~1998年から2001~2003年で30%、2001~2003年から2006~2008年で20.9%だったのに対し、2006~2008年から2011~2013年は7.4%に下がっている。
Top10%補正論文数でも、1996~1998年から2001~2003年は19.4%、2001~2003年から2006~2008年は17.6%だったが、2006~2008年から2011~2013年は5.4%に落ち込んでいた。
これに対し、科研費が関与しないTop10%補正論文数の伸び率は2001~2003年から2006~2008年はマイナス7.5%だったが、2006~2008年から2011~2013年は10.2%と増加に転じている。
一方、オンライン上で無料かつ制約なしで閲覧できるオープンアクセスジャーナルの論文のうち、科研費が関与したものは、2006~2008年から2011~2013年で118.2%の高い伸び率を示し、急激に増加している。このうち、Top10%補正論文数も同時期で142.4%と大きく伸び、科研費の存在感が増している。