核分裂は、原子核が変形して2つにちぎれる現象である。この“ちぎれ方”(ちぎれてできた2つの原子核の重さのバランス)を観測することで、原子核がどのように変形して核分裂が起こるかを調べることができるが、これまで、その詳細はわかっていなかった。
今回、日本原子力研究開発機構と東京工業大学らは共同研究で、原子核からの中性子放出と核分裂における原子核の“ちぎれ方”の関係を初めて明らかにした。
高いエネルギーをもった原子核は、核分裂して壊れることもあるが、核分裂したうえ中性子を放出して別の原子核になることがある。中性子を放出してもなお十分高いエネルギーをもっている場合には、再び核分裂することもあり、さらに再び中性子を放出して別の原子核になることもある。そのため、原子核の“ちぎれ方”を観測しても、元の原子核と中性子放出後の原子核のデータが混在し、特定の原子核だけに対する“ちぎれ方”の観測データを得られないことが、高エネルギーの核分裂研究の妨げとなっていた。
本研究では、様々なエネルギーをもった多種類の原子核をつくり、それらの“ちぎれ方”を観測した。そして、中性子放出後に核分裂が起こる効果を、近畿大学がおこなった理論計算と組み合わせることで、中性子放出後の個々の原子核の“ちぎれ方”を初めて捉えた。これにより、観測した“ちぎれ方”の内訳を明らかにすることに成功した。
長年データの解釈さえ確立されていなかった高エネルギーの原子核の“ちぎれ方”を正しく読み解いたこの成果は、核分裂現象に対する深い理解につながるもの。核分裂を利用した放射性物質の毒性低減のための核変換技術にも貢献が期待できるという。