東北大学は千葉大学・ハーバード大学等との国際共同研究で、世界で初めて、震災前の地域在住高齢者の情報と、津波による死亡原因の関連性を調査。さらに住環境の変わる震災後の中期的な死亡リスクについて調べた。
世界中で毎年災害により多くの死者が出ている。災害の弱者を特定して対策することが重要だが、どのような人が死亡しやすいのかについて個人の様々な特徴を調べた研究はほとんど存在しない。それは、災害前の調査がほとんど行われていないからだ。
今回、世界で初めて、地域に暮らす高齢者を対象に行った「被災前の健康状態や行動を含めた様々な要因の調査」と「津波による死亡」との関連性を調べた。
860名の調査参加者の内、33名(死亡率=3.8%)が震災当日に亡くなった。震災前に重度のうつ傾向だった人の死亡率は12.8%と高く、様々な要因を考慮したうえでも死亡のオッズ(起こりやすさ)は3.90倍で有意に高いことがわかった。
また、統計学的に有意ではないが、友人と会わない人に比べて、会う人の方が死亡のオッズ比が高い傾向にあった。友人を助けようとする行動により避難が遅れたと推察される。
震災翌日の2011年3月12日から2014年5月5日までの間には95名が死亡した(827名中の死亡率は11.5%)。友人と会う人は有意に低い死亡リスクだった(オッズ比=0.46)。人々のつながりは、有用な情報が入手しやすく、相談相手を増やすことで健康を守る効果があると考えられる。
今回の結果から、重度のうつ傾向の人は災害時に避難が遅れるハイリスク者として認識する必要があると推察している。また、友人との交流は震災後の死亡リスクを減らすが、孤立した被災者は支援が必要とされる。