東北大学と北海道大学などの研究グループは、想定外の故障に対して即座に適応できる移動ロボットの開発に世界で初めて成功したことを発表した。
近年、移動ロボットは、災害現場や宇宙環境などの人間が到達できないような過酷な環境下でも適切に機能することが期待されている。しかし、多くのロボットは、想定外の故障が起こるとその故障に適応するのに数十秒~数分もの時間を要してしまう。
一方、多くの動物は、身体の一部に傷害を受けても即座に適応することができる。そこで本研究グループは、動物の動きに着想を得ることとし、中でもクモヒトデという動物に着目した。クモヒトデは盤と5本の腕からなる五放射相称の身体構造をしており、外敵に襲われるなどして腕を失っても、残った腕が何本であろうとそれらを即座に協調させて動き回ることができる。さらに驚くべきことに、クモヒトデは「脳」のような高度な情報処理を担う中枢神経系を持たないという。
クモヒトデの驚異的な耐故障性は、局所的な感覚情報をもとに身体各所において動作を決定する自律分散的な制御により実現されていると推測した研究グループは、腕を除去あるいは短くしたクモヒトデの行動観察結果をもとに、「各腕が環境から進行方向側に反力を受けたときにのみ地面を蹴る」という極めてシンプルな数式で記述される自律分散制御則を設計した。そして、この制御則を実装し、腕をいかように破壊しても数秒以内に適応して動き続けるクモヒトデ型ロボットの開発に成功した。
この成果は、想定外の事象に対処可能な適応能力の高いロボットの実現につながるとともに、動物が有するリアルタイムな適応能力の発現原理の解明にも重要な知見を提供している。