理化学研究所、東京医科歯科大学などの共同研究チームは、大規模な解析により新しいぜんそく関連遺伝子と、ぜんそくと自己免疫疾患や炎症性疾患との関係、感染などへの免疫応答の関与などの手がかりを発見した。
ぜんそくは多因子疾患であり、罹患率や遺伝子要因のぜんそくへの寄与率の推定値は国や人種によって大きく異なる。これは、ぜんそくは環境の違いに左右されやすく、症状も多様であるからだ。これまで20の研究からぜんそくとの関連が認められた遺伝子座はわずか21である。
ぜんそく関連の新しい遺伝子座を発見するため、世界中の研究者グループで構成される「国際共同研究トランスナショナルぜんそく遺伝学コンソーシアム」が設立。共同研究チームも参画した。現在最大規模となる世界中の多集団(142,000人以上)で大規模ゲノムワイド関連解析を行った。
その結果、人種や環境の違いに左右されにくい、ぜんそくのリスクとなる18遺伝子座と878の一塩基多型(SNP)*の包括的なカタログを構築。ぜんそくに関連する5遺伝子座を発見した。また、ぜんそくと花粉症の併発症で示唆されていた2遺伝子座内に、既知のものと異なる新しいぜんそく関連SNPも発見。解析により、これらは自己免疫疾患や炎症性疾患の関連SNPと大きく重なることが分かった。同時に、ぜんそく関連SNPが、免疫関係の制御を担っている可能性も示された。
今回の成果は今後、ぜんそく発症のメカニズムの解明や関連する分子ターゲットの発見によって、効果的なぜんそく薬が期待できる。また、発見されたSNP群は、ぜんそくの発症リスクを予測する疾患遺伝子マーカーとしての活用が考えられる。
*集団のゲノム配列中でみられる一塩基の違い(個人差、多様性)で、特に、集団の1%以上に違いが認められる場合に、一塩基多型と呼ぶ。