東京大学と京都大学、米国ウィスコンシン大学の研究グループは、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報を伝える仕組みを明らかにした。
あらゆる生物において、子は親からゲノム(遺伝情報)を受け継ぐ。ウイルスも同じく、種を存続させるためにはゲノムを子孫ウイルスへ伝える必要がある。インフルエンザウイルスは8本のRNAをゲノムとして持つが、それがどのように子孫ウイルスに伝えられるのか、詳細は未解明とされていた。
本研究グループは以前に、8本のウイルスRNAが“1+7”という特徴的な配置(中心の1本のRNAを7本のRNAが取り囲む配置)に集められて子孫ウイルス粒子に取り込まれていることを発見した。しかし、ウイルスRNAが“1+7”という配置をとることの意義はよくわかっていなかった。
そこで本研究では、さらに解析を行い、通常の子孫ウイルス粒子の中に取り込まれているRNAに加え、ウイルスRNAを1本欠き7本しか持たない変異ウイルスを合成し、その変異ウイルス粒子の中に取り込まれたRNAも調べた。
結果、変異子孫ウイルスにも“1+7”に束ねられた8本のRNAが取り込まれていることがわかった。その上、この変異ウイルスに取り込まれた8本目のRNAは、インフルエンザウイルスのRNAではなく、感染細胞に存在するリボソームRNAであることがわかった。
この発見から、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスにゲノムを伝えるとき、8本のRNAを“1+7”に集合させる過程が重要であることがわかった。さらに、ウイルスのRNAが足りないときには、細胞のリボソームRNAを奪い取る仕組みを持つことが明らかとなった。
本成果は、ウイルスRNAの集合を標的とした新しい抗インフルエンザ薬の開発に繋がることが期待されている。