京都大学の生田宏一教授らの研究グループは、大阪大学、九州大学、ドイツがん研究センターと共同で、「グルココルチコイド」が、免疫を担うTリンパ球の体内循環と免疫応答能の日内変動を制御し、免疫力を高めていることを明らかにした。
グルココルチコイド(ステロイドホルモンの一種)は、強い免疫抑制作用を持ち、抗炎症剤や免疫抑制薬としてさまざまな病気の治療に用いられている。その濃度は日内変動しているが、免疫機能との関係は不明だった。
研究グループは、グルココルチコイド濃度の日内変動に着目し、一日の各時間帯におけるマウスのTリンパ球(リンパ球の一種)の変化を解析。その結果、グルココルチコイドが、Tリンパ球のある種の受容体(サイトカイン受容体IL-7Rとケモカイン受容体CXCR4)の発現量を夜間に高め昼間に下げていることが判明。また、その日内変動が、昼間に血中に留まり夜間にリンパ組織に集まるTリンパ球の体内分布の日内変動を生じていることがわかった。さらに、Tリンパ球が夜間にリンパ組織に集まることにより、リンパ球がより効率的に活性化され、強い免疫応答が引き起こされることがわかった。
以上の結果から、免疫抑制作用で有名なグルココルチコイドが、生体内においてはTリンパ球の循環と応答の日内変動を制御することで、逆に免疫機能を高める働きをもつことが明らかになった。
この結果は、不規則な生活によるグルココルチコイドの分泌の乱れが、免疫力の低下をもたらす可能性を示唆する。さらに、今後は、気管支喘息などのアレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患などの免疫異常と日内変動の関係性が解明されることが期待される。
論文情報:【Immunity】Glucocorticoids Drive Diurnal Oscillations in T Cell Distribution and Responses by Inducing Interleukin-7 Receptor and CXCR4(PDF)