神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学の八木匡教授は、子ども時代に親から受けた褒め方、叱り方が子どもの将来に与える影響を調査。褒め方では努力を評価する言葉が、叱り方では励ます言葉が良い影響を与えていることが分かった。
調査内容は、子ども時代に親から受けた褒め方、叱り方と、成人後の「自己決定度」「安心感」「計画実行能力」「法令順守」の関係。調査はインターネットによる。有効回答者は2052人(20~70歳)。
その結果、親に叱られた時に「次は頑張ろうね」と励まされたことを記憶している人は、「どうしてできないの」と叱られた人よりも、自己決定度と安心感が高かった。「罰を与える」ことは不安感を増すという意味で、良い結果を生まなかった。
親に褒められた場合、「頑張ったね」と努力の過程を認められた人の自己決定度と安心感がともに最も高く、「褒美をもらった」人の自己決定度が最も低かった。また「えらいね」というほめ方は、「頑張ったね」と比べると、自己決定度が低かった。
さらに、「罰を与えること」と「褒美を与えること」は、「次は頑張ろうね」や「頑張ったね」と言われるのと比較して、長期的な視点で物事を考える習慣や倫理的行動を低下させるという結果が得られた。これは、行動経済学における双曲割引(今日と明日の違いは1年後とその翌日の違いより大きいという、将来の利得を割り引いて考える傾向)の度合いを高めることと整合的な結果としている。
これらの結果は、自立心を身につけながら、高い倫理感と計画実行力を持つ人材の育成方法を示唆しており、教育、特に、初等・中等教育におけるあり方にも役立つとしている。