名古屋大学、ウィスコンシン大学、高知大学、モンゴル科学技術大学、東北大学らの共同研究グループは、モンゴル西部のエディアカラ紀後期(約5.5億年前)の地層から、海底下に潜入する生物の巣穴化石を発見した。
この巣穴化石は、地層面(すなわちかつての海底面)からは丸い穴として見られるが、2つの穴が中でつながり、「U字」状の構造を持っている。このような巣穴を形成する動物は、前後に伸びた形を持ち、一方で摂食を行い、もう一方で排泄を行う運動性を持った動物であると推察されるという。また、海底から下に、少なくとも4cm彫り込むような活動性を持っていたと考えられ、このことから、左右相称動物と呼ばれる、筋肉組織の発達した進化した段階の多細胞動物であったと推測されるという。
これまでこうした巣穴化石は、多種の海洋動物が爆発的に進化した時代とされるカンブリア紀(約5.4億~5億年前)以降にしか知られておらず、その前の時代であるエディアカラ紀からは、多細胞生物の化石はほとんど産出されていなかった。
今回の発見で、従来カンブリア紀に起きたと考えられていた「カンブリア紀の農耕革命」、すなわち動物による活発な巣穴形成と海底のかく乱が、モンゴル西部では、より早くエディアカラ紀に始まっていたことが初めて明らかになった。また、左右相称動物がエディアカラ紀に存在したことを示唆する強い証拠を得た結果となった。
カンブリア紀の動物の爆発的出現と多様化は、ダーウィン以来の生物学上の謎として知られる。今回の発見は、この進化の大事件の実態解明において重要な知見となると考えられている。