慶應義塾大学先端生命科学研究所の荒川和晴准教授は、ポーランド・ヤギェウォ大学と共同で、山形県鶴岡市内で新種のクマムシを発見し、「ショウナイチョウメイムシ」(ラテン名:Macrobiotus shonaicus)と命名した。
クマムシは、体長1mm以下の人間にとって無害な微小動物だ。クマムシの最も興味深い特徴の一つは、周辺環境の乾燥に伴ってほぼ完全に脱水できることである。無代謝の「乾眠」と呼ばれるこの状態は、超低温や放射線、宇宙真空への曝露にまで耐えられる極限環境耐性を持つことで注目されている。乾眠状態のクマムシは、数年もの長期保存後であっても給水によってまた速やかに生命活動を再開できる。
クマムシは18世紀に初めて発見され、現在世界で約1200種が知られているが、日本で見つかった新種はまだ26種と限定的である。今回、同グループは山形県鶴岡市大塚町の市街地のコンクリートに生えた苔からチョウメイムシ科(クマムシが乾眠によって何年も生きながらえる性質から名付けられた)に属するクマムシの新種を発見した。本種が庄内地方で初めて見つかったことから、荒川准教授らはこれをショウナイチョウメイムシMacrobiotus shonaicusと名付けた。現在、飼育系を開発し、ゲノム解析を進めているため、極限環境耐性に対する理解が進むことが期待される。また、ショウナイチョウメイムシには雌雄が存在するため、クマムシの生殖に関する研究への応用が期待される。