東京大学、大阪大学およびシンクサイト株式会社の研究グループは、人の目で見ても見分けることが難しい細胞を超高速・高精度に分析・判別し、さらにその細胞を超高速(従来の顕微鏡方式比で千倍以上)で分取するシステムを開発した。
「ゴーストサイトメトリー」と名付けられたこのシステムでは、機械の「目」を使って、毎秒数千~万細胞のスピードで細胞をリアルタイムに判別し、選択的に取り分けることができる。
「人を介さない画像情報解析ならば、画像は必要がない」。ここから、「画像(人が認識するためのデータ方式)を作らずに、細胞の形態情報を直接機械学習モデルに判別させる」というコンセプトを発案した。細胞形態データを画像化せずに機械学習させることで、超高速リアルタイム判別するイメージング処理が可能となった。
さらに、このイメージング法にマイクロ流体細胞分取技術を融合させることで、1)高速で細胞の蛍光イメージを計測し、2)機械学習でリアルタイム解析し、3)マイクロ流体中で選択的分取する、世界初の「機械学習駆動型リアルタイム細胞分離技術」が実現した。
これまで、形態観察に基づく細胞の分類、分離・分取はヒトの経験と認識力に基づいて行われてきたが、そのスピード・精度には限界があった。本成果により、大量の細胞を形態で評価し、選別し、活用することができるようになり、血液・体液診断、再生医療や細胞治療など、高い安全性や信頼性の求められる医療への貢献が期待される。
また、本研究者らはアカデミアや組織の枠を越えてベンチャー企業(シンクサイト株式会社)を設立し、共同研究でこれを成し遂げている点でも、先駆的な事例として評価されている。