千葉大学大学院医学研究院の森本侑樹特任助教、平原潔准教授、中山俊憲教授らのグループは、重症のぜんそくで起こる組織線維化を誘導する新たな細胞集団を同定し、組織線維化の新規メカニズムを明らかにした。
重症アレルギー疾患である気管支ぜんそくの治療には、現在、吸入ステロイドによる対処療法が一般的であるが、一度起きてしまった組織の線維化にはステロイドは無効であり、新たな治療法が求められている。組織の線維化は息切れ・呼吸困難を引き起こすため、罹患患者のQOLを著しく低下させるが、線維化が起こる分子メカニズムはこれまで不明であった。
今回、同研究グループは、気道周囲の線維化の誘導化メカニズムを検討し、Amphiregulin(アンフィレグリン)というタンパク質を特異的に産生する「線維化誘導-病原性記憶T細胞」を同定した。Amphiregulinは白血球の一種であり、ぜんそく発症に深く関わる好酸球を刺激する。刺激を受けた好酸球が、線維化の原因タンパク質「Osteopontin(オステオポンチン)」を分泌し、直接組織の線維化を引き起こすのだ。同グループは、好酸球に発現するEGF受容体の働きを抑制すると、Amphiregulin-Osteopontin経路によって引き起こされる組織線維化が抑制されることも明らかにした。
本成果により、Amphiregulin-Osteopontin経路は、ぜんそくの画期的な治療薬のターゲットとなることが期待されるだけでなく、EGF受容体阻害剤が肺がん治療薬として既に一般に広く使用されていることから、ドラッグ・リポジショニングの可能性も期待される。