京都大学大学院工学研究科の藤森真一郎准教授が国立環境研究所、国際応用システム研究所と共同で、2050年までの気候変動と温室効果ガス排出削減策による農業への影響を調べたところ、温室効果ガス削減策の方が飢餓リスクを高めることが分かった。研究グループは食料安全保障のために多様な政策オプションを取るべきだとしている。
京都大学によると、研究グループは複数の世界農業経済モデルを使い、2050年までの間に気候変動と温室効果ガス削減策がどのような影響を食料安全保障に与えるかを評価した。その結果、経済的な合理性に従って対策を実施した場合、気候変動による作物収量の変化より、温室効果ガス削減策の影響が大きいことが分かった。
温室効果ガス削減策に必要な費用が農業部門から排出されるメタンや亜酸化窒素への課税によって一部賄われ、結果的に食料価格の上昇や1人当たりの食料消費の減少、飢餓リスクの増加が生まれることを意味するとしている。
研究グループは今回の研究結果から、温室効果ガス削減策の経済的な合理性だけでなく、飢餓リスクに直面する低所得者、地域の特性などを考慮し、炭素税率を部門によって変える、直接排出を規制する、炭素税収を食料安全保障対策に充てるなど多様な政策オプションの採用を提言している。