静岡大学と畿央大学の研究グループは、マスクやサングラスで顔の一部が隠れた相手の表情から、3~5歳児がどの程度感情を読み取れるかを調査した。結果として、顔の一部が隠れている時には、顔の全部が見える時より相手の感情を読み取りにくくなるが、最も正答率の低かったサングラス着用でも約80%は正解できること、加えて、感情を込めた音声を伴った場合はほぼ100%正解できることが明らかとなった。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、日常生活でマスクを着用する機会が 急激に増えたが、顔の表情を認識する能力の発達途上にある子どもたちにとって、顔の一部が隠れるマスクの着用は、感情の読み取りを妨げる可能性が危惧されている。
そのため、本研究は、未就学児を対象に、マスクやサングラスで顔の一部が隠れた相手の感情の読み取りがどの程度困難になるのかを明らかにすることを目的に実施された。また、感情の読み取りを促進する工夫として、感情を込めた声を一緒に聴くことの効果についても検討した。
静岡大学教育学部附属幼稚園に通う3~5歳の幼児27名に調査に参加してもらい、顔画像の種類と音声有無の条件を変えながら、喜び・悲しみ・怒り・驚きの4つのうち指定する感情を表している顔画像を選んでもらった。
調査の結果、顔が全て見えているときの正答率がほぼ100%であったのに対し、マスクやサングラスを着用している顔では、正答率の低下が認められた。しかし、マスク着用でも約90%、サングラス着用でも約80%は正解でき、顔の一部が見えないことが感情の読み取りに与える悪影響はそれほど大きくないことが示唆された。さらに、感情を込めた音声を一緒に聴いたときは、顔の一部が隠れていても、ほぼ100%正解できた。
本研究を通じ、顔の一部が隠れることが未就学児の感情の読み取りに大きな懸念となるほどの影響は与えないことや、感情を込めて話をすることで子どもは相手の感情を理解しやすくなることが解明された。今後、さまざまな場面におけるマスクの着用に関する判断に、本研究の知見が活用できると考えられる。