東京大学大学院総合文化研究科の開一夫教授と中部大学人文学部心理学科の川本大史講師は、 脳波の一種である「事象関連電位」を用いて、親の応援が幼児の成功・失敗に対する認知処理を変えることを世界で初めて突き止めた。
外部からの成功・失敗や正解・不正解のフィードバックは、行動や学習に重要な役割を果たすことが知られている。これまでの研究から、大人は成功・失敗のフィードバックに対して区別した認知処理を行うことが分かっているが、幼児の場合は不明だった。
研究グループは、課題への正解・不正解により示される事象関連電位(脳波の一種で特定の刺激に対して生じる一過性の電位)を用いて認知処理を検討した。5歳児21名に対し、指定された動物のイラストがコンピューター画面の左側に表示されたか、右側に表示されたかをボタン押しによって回答させる認知課題を実施。この際に1人で行う状況と、親が隣で応援しながら行う状況を設定し、成功(○)・失敗(×)に対する脳活動を計測した。
実験の結果、親が隣で応援しながら課題を行った場合は成功・失敗を区別して認知処理できたが、1人で行った場合は区別して処理できなかった。また、親の応援がある場合は成功に対する報酬陽性電位(報酬やポジティブなフィードバックに対して生じる事象関連電位の成分)の振幅が1人で課題を行う時よりも大きかった。
今回の結果は、幼児の脳の発達には親の応援が重要な影響を及ぼす可能性を示しており、日ごろの親の関わり方が幼児の良し悪し判断や学習に重要な影響を及ぼすことを示唆している。今後は、親以外の人からの応援や、お金やモノを報酬とした場合など条件を変えて検討を行うという。