国立がん研究センターなど全国19施設※からなる共同研究グループは、肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差は、非喫煙者に発生しやすく、EGFR遺伝子に変異のある肺腺がんのかかりやすさに強くかかわっていることを明らかにした。
肺がんの中で最も発症頻度が高い肺腺がんは、肺がんの危険因子である喫煙との関連が比較的弱く、約半数は非喫煙者での発症だ。喫煙以外の危険因子が特定されておらず、罹患危険群の把握や発症予防は容易ではない。特に、日本を含めたアジアの国では、EGFR(上皮成長因子受容体)という遺伝子の変異を原因として発生する肺腺がんが多い。
共同研究グループは、日本人の肺腺がん患者約1万7千例と肺がんに罹患していない人約15万例について遺伝子多型を比較し、肺腺がん患者が優先的に持つ遺伝子の個人差を同定した。肺腺がん患者964例の末梢血DNAの全ゲノムシークエンス解析を行い、遺伝子の個人差とテロメア配列の長さとの関係を調べた。
その結果、日本人における肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差が19個同定され、その一部は、非喫煙者に多く発生するEGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんのかかりやすさと強く関わることが分かった。
また、一部の遺伝子の個人差は、染色体DNAの末端に存在しゲノムの安定化に関わるテロメア配列を長くすることで、肺腺がんへのかかりやすさを高めることが示された。染色体の末端部にあるテロメアの長さは細胞の寿命やゲノムの安定性と関係することが知られている。
今回の研究成果を基に、非喫煙者の肺腺がんの予防や早期発見の手掛かりとなることが期待されるとしている。
※他に、愛知県がんセンター、理化学研究所、東京大学、滋賀医科大学、東京医科歯科大学、日本赤十字社医療センター、神奈川県立がんセンター、秋田大学、佐賀大学、名古屋大学、信州大学、福島県立医科大学、群馬大学、京都大学、東北大学、岩手医科大学、岡山大学、株式会社スタージェンが参加