東北大学・大学院、獨協医科大学、カナダ・ウォータールー大学の研究グループは、排尿中の尿道内の流れベクトル(方向と速さ)分布を、1秒間に1,000枚以上の高フレームレートで可視化する超音波イメージング技術を開発。前立腺肥大症などにより変性した尿道内部の詳細な流れの可視化を初めて実現した。
前立腺肥大などの尿道の変性は排尿症状の主要因の一つで、慢性化すると患者のQOLが低下するため、効果的な診断治療技術が必要とされる。治療手段が多様化する一方で、尿道内腔状態が尿の排出に与える影響を詳細に評価する手段はなかった。
今回、研究グループは、ハイフレームレート超音波撮像法という技術に基づき、B-mode動画(臓器の断層画像)と流れベクトル動画(流れの方向と速さの空間分布画像)を1,250画像/秒という高いフレームレートで同時に取得できる経直腸超音波イメージングシステムを新たに開発した。
このシステムを用いて、排尿症状がある男性被験者に排尿流イメージングを実施したところ、排尿開始期と排尿終了期において、約1秒間に流路の拡張・収縮、流路角度の変化、流れの発達や停止などのダイナミクスの可視化に成功した。
その結果、排尿終了期では、外尿道括約筋の運動によって、尿道の収縮が出口側から膀胱測に伝搬し、この運動によって尿が膀胱側に飲み込まれるように逆流していることが明らかになった。特に尿道内に狭窄がある場合は、尿道内に渦流やジェット流が生じていることが分かった。
今回の研究成果により、排出中の流れの詳細な観察が可能となり、患者個別に最適な投薬や低侵襲な手術などの治療の発展に貢献することが期待されるとしている。