大阪大学の大久保雄司助教らの研究グループは、フッ素樹脂である PTFE(テフロン)とシリコーン樹脂(PDMS)の強力接着を実現した。さらに、その技術を応用して、「フッ素樹脂と金属」と「フッ素樹脂とガラス」を接着剤なしで強力に接着する技術を世界で初めて開発した。
これまでは、薬剤を使用してフッ素樹脂の接着性を向上させ、接着剤も使用してフッ素樹脂と金属、フッ素樹脂とガラスを接着していた。しかし、金属ナトリウムを含む薬剤は作業者や環境に有害で、接着剤の使用による揮発性有機化合物(VOC)の問題もあり、安全性が重視される医療分野や食品分野ではその利用が懸念されていた。
研究グループは、高分子材料の表面に大気圧プラズマを照射し、表面を活性化して異種材料同士の接着性を向上させる研究に取り組んできた。これまでにフッ素樹脂と未加硫ゴムとの間で、フッ素樹脂側のみにプラズマ処理を行って強力接着を実現していたが、今回は加硫済ゴムであるシリコーン樹脂にもプラズマ処理することで、フッ素樹脂とシリコーン樹脂の強力接着を実現した。
さらに、プラズマ処理したシリコーン樹脂を金属やガラスと強力接着させる従来技術と、加熱しながらの(熱アシスト)プラズマ処理とを組み合わせることにより、両面をプラズマ処理したシリコーン樹脂を介して「フッ素樹脂と金属」、「フッ素樹脂とガラス」の強力接着を実現した。
今回開発した技術は接着剤レスのため、VOC低減(低環境負荷、シックハウス症候群の防止)、医療・食品分野での応用が期待される。また、銅・ステンレス・ガラス以外の無機材料にも適用可能であるため、様々な材料のマルチマテリアル化に貢献できる可能性がある。