日本特有とされる学校心電図検診が、特発性肺動脈性肺高血圧(IPAH)の早期診断に有用であることが分かった。三重大学医学部附属病院の三谷義英准教授、医学系研究科の澤田博文講師が全国調査の結果により証明した。
特発性肺動脈性肺高血圧(IPAH)は、まれな疾患で、小児100万人あたり年間に1名が発症する。肺高血圧の中で末梢の肺動脈が収縮・閉塞を生じ、他の原因が認めらないものを指す。2000年代以降、有効な治療薬の開発により、5年生存率は約75%と改善したが、予後不良な疾患だ。早期に診断された例では、診断が遅れた例より治療後の予後が良好な傾向にある。しかし、息切れ・疲れやすさなどの主症状は気づかれにくく、早期に診断することが困難だ。そのため、早期診断法は最近20年以上あまり進歩していない。
日本では1954年から関西地方の一部地区で学校心臓検診が行われている。1995年には学校保険法施行規則の改正により、全国の小学校・中学校・高校の1年生全員に心電図検査が義務化された。しかし、心電図は右室肥大を反映するが、肺高血圧を早期診断できるか不明だった。
そこで、2005年~2012年にかけて全国調査を行い、肺高血圧を早期診断できるかを調査した。その結果、特発性肺動脈性肺高血圧の診断を受けた患者の年齢では学校検診を受ける年齢が突出しており、その有用性が示されていた。また、検診発見例の方が症状等で発見された場合に比べて軽症である場合が多く、予後が良いことも分かった。
今回の発見により、今後、学校心電図検診の判読の向上による早期診断の進歩や、日本独自のシステムである学校心電図検診の日本以外での議論と普及が期待される。