九州大学の秋山雅人講師、理化学研究所の鎌谷洋一郎チームリーダーらの共同研究グループは、1,204名の定型網膜色素変性患者の遺伝子解析を行い、日本人患者で多く認められる原因遺伝子とその変異を明らかにした。
網膜色素変性は、眼の光を感じる部位である網膜に変性を生じ、進行性の視覚障害を起こす病気だ。日本の中途失明原因の第2位であり、約3万人の患者が日本にいると考えられている。遺伝子の異常が原因である遺伝性疾患で、80種類以上の原因遺伝子が報告されている。現時点で確立された有効な治療法はないが、近年、九州大学病院などで臨床研究を進めている遺伝子治療が検討されてきており、病気の進み方が原因遺伝子により異なることも知られていることから、原因遺伝子や変異を特定する重要性は高まっている。これまで欧米を中心に多数例での遺伝学的研究が進められてきたが、日本人に対する検討は比較的小規模なものに限られていた。
今回、共同研究グループは国内の6施設(九州大学、順天堂大学、東北大学、名古屋大学、浜松医科大学、およびわだゆうこ眼科クリニック)で収集された日本人の定型網膜色素変性患者1,204名のDNAサンプルを用いて、83の原因遺伝子の翻訳領域(タンパクに翻訳される部分)の全塩基配列を対象に調査を行った。理化学研究所生命医科学研究センターで解析を行い、日本の定型網膜色素変性で特徴的な原因遺伝子と変異を明らかにすることに成功した。
今回の研究により、日本人における定型網膜色素変性の病因の把握だけでなく、将来的な治療法の開発や、その適応の選定に役立つことが期待される。