世界最高水準の教育力と研究力を兼ね備えた卓越大学院の創設が、今後の大学院教育のあり方を議論する文部科学省の中央教育審議会大学院部会が作成した審議まとめの素案に盛り込まれました。政府が6月にまとめた「日本再興戦略」の改訂版で大学改革の一環として示されたもので、人工知能などを研究し、新しい産業を生み出す拠点となることが期待されています。
素案によると、卓越大学院は修士課程と博士課程を一貫した5年間のプログラム。世界を股にかけて活躍する人材の育成を目的とする既存の博士課程リーディングシステムをもとに制度設計します。研究内容は日本が国際的に優位な領域、新しい産業の創出に繋がる領域、文理融合領域などを想定。外国の大学、研究機関や民間の企業と協力してさまざまな人材が共同研究に入れる組織を目指し、「知のプロフェッショナル」を育成するとしています。
研究補助者として雇った大学院生に給与を支払うリサーチアシスタントの導入も検討します。文科省は本年度中に産官学による検討会を設置、検討対象や仕組みを示す方針です。2016年度以降、各大学が民間企業と連携して構想の具体化に入ることにしています。
日本の大学院は近年、優秀な学生が博士課程に進まず、国際競争力の低下が心配されています。高い専門性と倫理観を持ち、新しい価値を生み出して国際的に活躍できる人材の育成が緊急の課題に浮上してきました。そこで、中教審部会は大学院改革について、体系的、組織的な教育の推進と学生の質の向上、法科大学院など専門職大学院の質の向上、産官学民の連携強化と社会人の学び直しの促進など7項目の方向性を明らかにするとともに、卓越大学院をこうした改革の中の重要課題と位置づけました。
さらに素案では、最近の研究不正を問題視し、大学院での研究倫理教育や指導体制の改善にも言及。論文指導に複数の教員が当たることや、審査への盗用検索ソフト活用、教員の研究倫理プログラム履修を導入すべきだとしています。