森林研究・整備機構森林総合研究所と立命館大学、京都大学、国立環境研究所、東京農業大学の研究チームは、地球温暖化防止パリ協定が目指す長期気候目標(2度目標)達成が生物多様性の損失を抑えることを突き止めた。
森林総合研究所によると、研究チームは世界中に分布する5億以上の生物情報から維管束植物1,605種、鳥類4,796種、哺乳類1,137種、両生類509種、は虫類381種の合計8,428種を抽出。統計学上の手法を使い、気温や降水量、土地利用状況などを基に2度目標を達成するために対策を推進するケースと何もせずに温暖化が進行するケースで生物分布状況の変化を調べた。
さらに、持続可能な社会構築、化石燃料依存など5種類の社会経済状況を想定し、それに見合った土地利用の変化を予測して想定別に2070年代の生物多様性の変化を比較した。
その結果、目標が達成されたケースの方が何もしないケースより、失われる生物の生息地が少なくて済み、生物多様性の損失を抑えられることが分かった。5つの想定では持続可能な社会構築の想定が最も生物多様性の損失を抑えられた。研究チームは強い土地規制で自然環境が保全されるためとみている。
パリ協定では産業革命前に比べて温度上昇を2度以内とする長期気候目標を打ち出しているが、目標の達成には新規の植林やバイオ燃料用の作物栽培など土地改変が必要で、これが野生生物のすみかを奪い、生物多様性を低下させるとの見方が出ていた。