広島大学の木村昭夫教授の研究グループは、ロシア・サンクトペテルブルグ大学やスペイン・ドノスティア国際物理センターなどとの国際共同研究として、「反強磁性トポロジカル絶縁体」を世界で初めて発見した。
トポロジカル絶縁体は、物質内部は電気を通さない絶縁体だが、表面では金属的な振る舞いを示すもの。このトポロジカル絶縁体に磁石の機能を加え、全く新しい現象が予測・発見されている。一つは「量子異常ホール効果」と呼ばれ、試料の端に沿って摩擦のない電流を外部磁場なしで発生する。もう一つは、「トポロジカル電気磁気効果」で、電場で磁化を発生し、磁場で電気分極を発生する現象だ。そして「反強磁性トポロジカル絶縁体」では常識外の効果が予測されていたが、そのような物質は未発見であった。
研究チームは、高度な理論計算によりMnBi2Te4(マンガン・ビスマス・テルル)が反強磁性トポロジカル絶縁体になりうることを予測。次にその単結晶試料を作製して特性を調べると、層状の反強磁性体(隣接原子の磁気モーメントの逆向き配列により全体が磁化ゼロの物質)と判明。その試料を、広島大学で角度分解光電子分光により実験し、その表面に大きなエネルギーギャップが開いたディラック電子(質量ゼロの電子)状態を直接的に観測した。これにより世界で初めて反強磁性トポロジカル絶縁体の実現に成功した。
今回の反強磁性トポロジカル絶縁体の発見は大きな意味がある。未発見の素粒子「アクシオン」が関わるトポロジカル電気磁気効果の観測・研究が加速することだ。発見された反強磁性トポロジカル絶縁体を用いて、アクシオンによる様々な新しい現象の発見が期待される。
論文情報:【Nature】Prediction and observation of an antiferromagnetic topological in
sulator