太陽は核融合によるエネルギーで輝いている。核融合エネルギーは人類のエネルギー問題を解決する究極のエネルギー源と目され、僅か1gの燃料で石油8トンに相当するエネルギーを生み出せるという。核融合エネルギーを地上で実現するため、高出力レーザーを用いて核融合反応を起こす「レーザー核融合」研究が、日本を始め米国、仏国、中国等で行われている。しかし、主流とされる「中心点火方式」は、未だ成功に至っていない。
こうした中、大阪大学が擁するLFEXレーザーを用いて、太陽中心の1/10に匹敵する超高圧力状態のプラズマ生成が成し遂げられた。日本の大阪大学、広島大学、レーザー技術総合研究所、自然科学研究機構核融合科学研究所、光産業創成大学院大学、米国のネバダ大学、パデュー大学などからなる国際共同研究チームの成果で、レーザー核融合の実現に必要な高圧力に迫った。
本研究チームは「高速点火方式」という独自の高効率レーザー核融合方式を採用しており、これまでに1キロテスラ(一般的な磁石の1000倍の強さ)という地上最強級の磁石と組み合わせた「磁化高速点火」の原理を実証し、加熱効率を高めることに成功してきた。今回の研究では、これを更に発展させ、プラズマを最大で2千万度まで加熱し、200億気圧という驚異的な高圧力プラズマの生成に成功した。
今回の成功の鍵の1つは、超高強度レーザーでプラズマを加熱しつづける長時間加熱だ。LFEXレーザーは比較的長時間(それでも僅か1兆分の1秒)の照射が可能で、その出力は、世界中で消費される電気パワーの1000倍に及ぶ。
磁化高速点火方式では、他国の巨大レーザー施設の1/5以下の規模で超高圧力を達成できるという。世界で最も効率的に核融合点火を射程内に捉え、今後も研究が進む予定だ。