2020年4月7日、理化学研究所はスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」について、計算資源を可能な限り関連研究開発に供出すると発表した。
スーパーコンピュータ「富岳」は文部科学省と連携し、理化学研究所が開発主体となって開発・整備が進められている。2019年7月に運用終了した「京」の後継機として、成果の高さ、裾野(ユーザー)の広がりを象徴して名付けられた。共用開始は2021年度の予定だが、科学的・社会的課題の解決に直結する成果を早期から創出することが求められており、今回の供出が決まった。開発・整備に支障がない範囲を見極めながら、ベストエフォートで対応するという。
具体的には、理研からの協力を踏まえて文部科学省が決定する研究開発の実施課題に対し、「富岳」の計算資源を開発・整備に支障がない範囲で優先して供出し、技術的サポートを行う。
現在決まっているのは以下の研究開発課題。
①新型コロナウイルス治療薬候補同定(課題代表者:理化学研究所/京都大学 奥野 恭史)
②新型コロナウイルス表面のタンパク質動的構造予測(課題代表者:理化学研究所 杉田 有治)
③パンデミック現象および対策のシミュレーション解析(課題代表者:理化学研究所 伊藤 伸泰)
④新型コロナウイルス関連タンパク質に対するフラグメント分子軌道計算(課題代表者:立教大学 望月 祐志)
理化学研究所 計算科学研究センター 松岡聡センター長は「世界最先端・最高アプリケーション性能を目指して開発されてきた我が国のフラッグシップスパコン『富岳』の最も重要なミッションの一つは、国民の安全安心を強大な計算の力で守ることです。今回の新型コロナウイルスによる国難に対し、診断・治療から感染拡大防止などにおける科学をベースとした対応に稼働準備中の『富岳』の能力を大幅に前倒して速やかに提供し、一日も早いパンデミックの終結に貢献します。」とコメントしている。