理化学研究所、東京大学、国土地理院、大阪工業大学の共同研究グループは、島津製作所と共同で18桁精度の超高精度な可搬型光格子時計の開発に世界で初めて成功。東京スカイツリーの高さを精密に測量し一般相対性理論を検証した。
アインシュタインの一般相対性理論によれば、標高が高いほど時計の進みが速くなるが、従来技術の精度では標高の違いが時計の進み方に与える違いを地上で計測することは困難だった。しかし、光格子時計を用いて重力場(重力ポテンシャルの違い)を把握し標高に応じた時計の進み方の違いを計ることで、離れた2地点間の標高差をセンチメートルレベルの高精度で計測が可能になる。
研究グループは、実験室環境だけでなく実験室外の環境でも18桁精度(百億年に1秒のずれに相当)を実現できる可搬型ストロンチウム光格子時計を開発。この時計2台を東京スカイツリーの約450メートルの標高差がある地上階と展望台の2か所に設置し、各時計の進み方の違いを測定。結果を国土地理院が測定した標高差と比較し一般相対性理論の検証実験を行った。
その結果、展望台の時計が地上階の時計よりも時間が早く進んでいることが計測され、従来の衛星を使った実験に迫る精度で検証に成功。1万キロメートルの高低差を必要とした従来の宇宙実験に比べて、今回開発した可搬型光格子時計を使うことで、1万倍以上少ない高低差で、同等の実験が可能になった。
高精度な可搬型光格子時計の実験室外運転の実証は、光格子時計の社会実装に向けた大きな一歩となる。今後、プレート運動や火山活動などに伴う数センチメートル精度の地殻変動の監視など相対論的センシング技術の実用化が期待されるとしている。
論文情報:【Nature Photonics】Test of General Relativity by a Pair of Transportable Optical Lattice Clocks