東京大学大学院工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンターの研究者らを中心とするグループは、南鳥島沖の超高濃度レアアース泥が3450万年前に起こった地球の寒冷化に伴って生成したことを突き止めた。
同グループは、2013年に南鳥島沖の日本の排他的経済水域内で、レアアースの資源として有望な超高濃度レアアース泥を発見した。レアアースは先端技術・ハイテク製品に不可欠な元素群であり、その生成メカニズムが解明できれば、海洋中の分布の理論予測ができるようになると期待されている。
これまでの研究で、超高濃度レアアース泥には、海水からレアアースを濃集する魚の骨の化石(以下、魚骨片)が大量に含まれていることがわかっている。しかし、大量の魚骨片がいつ、どのようにして堆積したのかは不明だった。
今回、本グループは、魚の歯の化石の形状分類と海水中のオスミウム同位体比に基づく年代決定の結果、南鳥島沖の超高濃度レアアース泥が約3450万年前に生成したことを明らかにした。さらに、当時の魚骨片の堆積量が急増していたことを見出し、この時代に南鳥島周辺で急激に魚が増えたと推測した。
この時代は地球規模の寒冷化の開始時期にあたり、極域で冷やされ重くなった海水が深海に沈み込み、海洋循環が強まったと考えられている。強化された低層流が海山に衝突すると、湧昇流が発生し、深層に蓄積していた大量の栄養塩が表層にもたらされる結果、海山周辺で魚が急増する。南鳥島沖にも大規模な海山が存在するため、湧昇流発生のトリガーとなり、周辺に魚骨片の堆積が増加して超高濃度レアアース泥が生成されたと考えられた。
南鳥島を含む北西太平洋から中央太平洋にかけては、多数の大きな海山が存在している。本研究で判明したメカニズムから、これらの海山の近傍に超高濃度レアアース泥が分布している可能性は高く、今後の重要な探査ターゲットになると考えられる。